抗パーキンソン病薬を服用する方は幻覚・妄想が引き起こされることがあるのを注意して下さい。

さて、黒質線条体のドーパミンが減っていることで運動障害を発症するパーキンソン病に対し て、ドーパミンを増やすはたらきのある抗パーキンソン病薬を使うわけですが、この薬は黒質線条体にあるドーパミン神経細胞だけに作用してくれず、脳のその他の部位にも作用してしまいます。

そのことから、抗パーキンソン病薬が思わぬ副作用を招いてしまうことがあるのです。

例えば、必要としないドーパミンが中脳辺縁系で増加するとどうなるでしよう。そうです、統合失調症のように、幻覚・妄想が出現すると考えられます。

あくまでも私の経験であり、理由はよくわからないのですが、パーキンソン病の患者さんが体験する幻覚には「幻視」が多いように思います。

夕刻になって視覚情報が減じてきたときに、錯覚から幻視へと発展することが多く、虫や小動物、人影(幽霊)が見える、などの訴えをよく耳にします。

また妄想の内容としては、老年期によく認められる、自分に危害を加えようとしているのではないかといった被害妄想ではなく、実際に危害を加えられたという妄想や迫害妄想が多いように思います。

対処について

対処としては、まず、ドーパンミンを増やすはたらきのある抗パーキンソン病薬の投与量を減じることで、 ドーパミンを適切量まで減らすよう試みます。

抗パーキンソン病薬を限界まで減量したあとにも幻覚・妄想が続くときには、抗精神病薬をごく少量から投与し、抗精神病薬のドーパミン遮断効果によって中脳辺縁系のドーパミンが適切量になるように調整していきます。

抗精神病薬を投与するとき、定型抗精神薬は錐体外路系症状を惹起する可能性が高いため、できる限り錐体外路症状の発現リスクが少ない非定型抗精神病薬を投与するのが好ましいといえます。

ところが、日本国内で使用できる非定型抗精神病薬はすべて、「統合失調症にしか適応が認められていない」という現実があります(今後の適応拡大に期待したいところです)。そのためやむを得ず私は、定型抗精神病薬をごく少量で用いるようにしています。

定型抗精神病薬のなかでもドーパミン拮抗作用の高いハロペリドール(セレネース®など)を少量使用することが多いのですが、少量でもひどい副作用が出現する症例も少なくありません。

そのような場合はハロペリドールほどの作用はないものの、ドーパミン拮抗作用をもつ脳循環改善薬のチアプリド(グラマリール®など)を用いています。

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