持ち越し、筋弛緩、反跳性不眠、アルコール依存症と子供の奇形障害から睡眠薬の副作用を分析する

処方薬には必ずその薬剤の効能、用量、副作用(有害事象)、禁忌などが」かかれた添付文書(説明書)があります。それらに記載されている睡眠薬の服用における注意事項を以下に表示しています。

睡眠薬の副作用:

1.持ち越し・・・寝ぼけの状態を引き起こす

持ち越しとは、ときに長時間作用型の睡眠薬に多くおきる現象です。

一度覚醒しても催眠の効果が持続してしまい、寝ぼけのような状態を呈することをいいます。

短時間作用型でも、代謝能力が低下している高齢者には出現しやすいので注意が必要です。

また、この持ち越しによって精神作業能力が低下する恐れがあるため、少しでも持ち越しの症状を呈する場合は、車の運転や危険を伴う作業は避けさせるべきです。

2.筋弛緩作用・・・転倒の危険性を高める

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は筋弛緩作用も有しており、その作用は高齢者に強く現れます

トイレに行くために、歩いた際や徘徊中に転倒し、骨折する危険性がある(大腿骨頭骨折が多い)ので注意します。

実際に筋弛緩作用が認められたときには非ベンゾジアゼピン系睡眠薬へ変更するなどの対応が必要です。

しかしながらベンゾジアゼピン系では催眠効果が得あられない場合もあり、その場合はベンゾジアゼピン系に戻さなければばりません。

そうなればどれほど注意しても筋弛緩による転倒の可能性が高まりますので、夜間に離床することを少なくする工夫が重要となります。

高齢者施設などでは、夜問にトイレに立たなくてずむように水分摂取のタイミングを工夫したり、就寝前にトイレに行く習慣づけを行うようにし、中途觉解を少なくする工夫をしているようです。

ケアを行う人のこのような工夫でかなりの転倒事故のリスクが軽減されていると思います。

3.反跳性不眠・・・急に服薬を中止すると不眠になる

睡眠薬の服用で難しいのは、急に睡眠薬の服薬を中止すると、リバウンド現象として不眠を生じる場合があるということです。

これは生体内でのリズムやホメオスターシス(恒常性)が急激に変化することで起こるので、睡眠効果時間が短い薬剤、つまり超短時間や短時間作用型の睡眠薬服薬で起きやすくなります。

4.アルコールとの相互作用・・・奇異反応や健忘を引き起こす

睡眠薬で問題となる事象の多くはアルコールとの併用によるものです。

アルコールには睡眠を促進するかのような誤解があります。

このような誤解によって睡眠薬の効果が不十分なときに、「追加頓服」くらいの軽い気持ちでアルコールを摂取する人がいます。

しかし、高用量の睡眠薬とアルコールとを併用した場合に、逆に不安・焦燥の症状が顕著に出現し、怯えるような奇妙な反応を起こしたり、攻撃的になることが実際にあるのです。

これを奇異反応といいます。また中途覚醒したときのことや、覚醒してしばらくの間の出来事について記憶がないという健忘が現れることがあります。

不眠とアルコール依存症との関係

不眠とアルコール依存症との関係は深く、不眠をきっかけにアルコールを飲むようになり、次第に乱用し、アルコールへの依存を形成してしまう場合や、アルコールの病的飲酒後の離脱症状のひとつとして不眠を呈する場合があり、“卵が先か鶏が先か”判別のつかない不眠が非常に多く見られます。

薬理学的にはアルコールと睡眠薬は交差耐性(アルコールに対して耐性を獲得すると睡眠薬に対して耐性も獲得してしまうこと)があることが分かっています。

ですから、アルコールに対して依存性の治療に不慣れな精神科医のなかに、“睡眠薬”を飲むほうが、 “アルコール”を飲むよりはまだ安全だろうと考え、安易に睡眠薬を処方してしまう医師がいることです。

このような場合、結局アルコールを断っても睡眠薬が手放せない“処方薬依存”となってしまうケースが非常に多いのです。

このような問題を予防するために私は、アルコール依存症の治療においては疾病教育の段階で、「睡眠薬を併用してはいけない」ことや、その理由について必ず触れるようにしています。

不眠時でできるだけ睡眠薬を使わないようにし、やむを得ず処方する場合でも依存になりやすい短時間作用型を避け、処方時間をできるだけ短くするなどの工夫をしています。

5.子供の奇形障害・・・妊娠可能性がある女性への投与を避ける

昔、サリドマイドという睡眠薬がありました。妊娠初期に服用すると胎児に奇形障害が生じることが判明し、睡眠薬としての使用が禁止になっています。

現在、睡眠薬に関わらずほとんどの薬剤は、この催奇性の問題を考慮し、妊婦及び妊娠の可能性がある女性に対しては投薬を避けるよう注意が促されています。

薬の安全性が重視されるようになった背景にはこのような悲しい出来事があったということを知っておいてほしいと思います。

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