「老年期に使う薬」の豆知識」カテゴリーアーカイブ

代謝性意識障害の原因は「脱水」「アルコール」「処方薬」が多く、治療を体系的に把握するのは難しい

代謝性意識障害

代謝意識障害は老年期に特有なものではありませんが、加齢によりすべての生体機能が低下す る老年期には起こりやすくなる、という意味で解説しておきましよう。

「脱水」

一番頻度が高いのは、脱水を原因とする代謝性意識障害です。渴きのセンサーが鈍くなるしとや、 空調による不感蒸泄、本人が尿失禁を気にして水分補給をためらうなど、さまざまな原因が考えられます。

最近では、夏期の猛暑が原因で脱水症状を呈する高齢者が非常に多く、夏期はハイリスクシーズンです。

「アルコール」

また、脱水状態にある身体に過剰なアルコールを摂取した結果でも、代謝性意識障害が引き起こされます。

この10年間の統計では、アルコール摂取の問題で受診する高齢者が 年々増えている現状があります。

症状改善のためには、脱水には「輸液」、アル コール問題には「解毒」といった対処療法を行い なから、脱水の場合には水分補給の大切さを指導したり、アルコール問題の場合には断酒(アル コールを減らすのではなく断つ)指導を行っていきます。

処方薬

処方薬による副作用で、代謝性意識障害が起こることもあります。 前述の夜間せん妄の項に記したように、ベンゾジアゼピン系抗不安薬による過鎮静によってせん妄様の症状が出たり、睡眠導入薬の効果の遷延が原因でせん妄様の症状が出るといった現象です。

処方薬を原因とする場合には、薬剤の見直しを行って原因を取り除いていかなければなりません。

老年期の精神障害とその薬物療法についてお話してきましたが、その病態は非常に多彩です。治療指針を体系的に把握するのは難しいものがあると思います。

抗パーキンソン病薬を服用する方は幻覚・妄想が引き起こされることがあるのを注意して下さい。

さて、黒質線条体のドーパミンが減っていることで運動障害を発症するパーキンソン病に対し て、ドーパミンを増やすはたらきのある抗パーキンソン病薬を使うわけですが、この薬は黒質線条体にあるドーパミン神経細胞だけに作用してくれず、脳のその他の部位にも作用してしまいます。

そのことから、抗パーキンソン病薬が思わぬ副作用を招いてしまうことがあるのです。

例えば、必要としないドーパミンが中脳辺縁系で増加するとどうなるでしよう。そうです、統合失調症のように、幻覚・妄想が出現すると考えられます。

あくまでも私の経験であり、理由はよくわからないのですが、パーキンソン病の患者さんが体験する幻覚には「幻視」が多いように思います。

夕刻になって視覚情報が減じてきたときに、錯覚から幻視へと発展することが多く、虫や小動物、人影(幽霊)が見える、などの訴えをよく耳にします。

また妄想の内容としては、老年期によく認められる、自分に危害を加えようとしているのではないかといった被害妄想ではなく、実際に危害を加えられたという妄想や迫害妄想が多いように思います。

対処について

対処としては、まず、ドーパンミンを増やすはたらきのある抗パーキンソン病薬の投与量を減じることで、 ドーパミンを適切量まで減らすよう試みます。

抗パーキンソン病薬を限界まで減量したあとにも幻覚・妄想が続くときには、抗精神病薬をごく少量から投与し、抗精神病薬のドーパミン遮断効果によって中脳辺縁系のドーパミンが適切量になるように調整していきます。

抗精神病薬を投与するとき、定型抗精神薬は錐体外路系症状を惹起する可能性が高いため、できる限り錐体外路症状の発現リスクが少ない非定型抗精神病薬を投与するのが好ましいといえます。

ところが、日本国内で使用できる非定型抗精神病薬はすべて、「統合失調症にしか適応が認められていない」という現実があります(今後の適応拡大に期待したいところです)。そのためやむを得ず私は、定型抗精神病薬をごく少量で用いるようにしています。

定型抗精神病薬のなかでもドーパミン拮抗作用の高いハロペリドール(セレネース®など)を少量使用することが多いのですが、少量でもひどい副作用が出現する症例も少なくありません。

そのような場合はハロペリドールほどの作用はないものの、ドーパミン拮抗作用をもつ脳循環改善薬のチアプリド(グラマリール®など)を用いています。

認知症治療薬を服用してから、どれくらいで効果が現れるか?重い副作用があるかを解説します。

どれくらいで効果が現れるか

効果を発現するとき、それを実感するのも家族です。3〜4週間で少し変化がみられ、6〜8週間で少し効いていると実感するようです。

ご家族の言葉を引用すれば、「会話のなかで表情が豊かになり疎通がとれていることがわかる」「何度も同じことを言ったり聞いてくることが少なくなった」「自分から何かをしようという意欲がみられるようになった」といったように効果を実感されるようです。

かなり軽度のうちに治療を開始し効果がみられた患者さんでは、患者さん自身が記銘力の改善や記憶想起が早くなった(特に人の名前や物品の名称が思い出せるようになった)と言われることもあります。

重い副作用は?

アセチルコリンの分解を阻害するという特徴上、ドネベジルの副作用で比較的よくみられる副作用に、嘔気や嘔吐、食欲不搌、腹痛や下痢があげられます。

重い副作用は稀ですが、全くないわけではありません。最も重い副作用には、徐脈やそれに伴う失神があげられます。

その他には消化性潰瘍の既往がある方は胃潰瘍の発現(再発)率が高いと報告されています。頻度はさらに少ないのですが、最近横紋筋融解症の報告もあります。

認知症症状の改善は望めても、 認知症の進行を止める薬ではない

アルツイマー型認知症とは

アルツイマー型認知症とは、広範な脳細胞の衰退によって起こる認知症症状です。

記銘力障害にはじまりゆっくりと進行します。画像検査ではにはじ奥上の脳の中心近くにある記憶を司る海馬の萎縮が特徴的で、これは病初期からみられます。

1970年代から80年代にかけて記憶や認知機能とアセチルコリンの関係がわかり、認知症症状がアゼチルコリンの欠乏によるのではないかといで仮説がてられました。

この仮説をもとに開発れたのがアセチルコリン分解酵素阻害薬です。

認知症症状の改善は望めても、認知症の進行を止める薬ではない

現在日本で認知症(アルツバイマー型認知症)に有効であるとされ、処方可能な治療薬に、アセチルコリン分解酵素阻害薬のドネべジル(アリセブト®)があります。

認知症の治療薬というと、認知症自体が改善して、もとに戻るイメージを頭に浮かべてしまいますが、アセチルコリン系神経機能の改善は認知症の“記憶”や“認知”面の改善に過ぎず、病気の本質を改善できるわけではありません。

アセチルコリン分解酵素阻害薬は認知症の特効薬のようなイメージで処方を希望される患者さんやご家族がいらっしやいますが、あくまで対症療法であって、 限界があるといわれていることを理解してください。

認知症の進行につれて効果が減弱することが必然だ

私の経験でも、認知症の進行をゆるやかにすることはあっても完全に改善することはなく、3~5年で効果が減弱するケースがほとんどです。

私に、担当したアルツイマー型認知症患者さんに、日本で発発(1999年11月末)されて即投与を開始したのですが、残念ながら現在でも効果が続いている患者さんはいません。

海外の研究でも、投与して5年程度でその効果が頭打ちになったり、減弱したりすると報告されています。

新しい認知症治療薬が登場してくる

ガランタミン(レミニール®)やメマンチン(メマリー®)などの、中等度から高度の認知症症状を改善する効果が期待される新しい認知症治療薬が登場してくると思われます。

臨床現場での効果の報告に関心が寄せられます。

脳の活性化に有効な指の刺激 転倒・認知症を予防できる

 

1.指先の屈曲・伸展
①足を肩幅に開き、自然に立って肘を90度程度に曲げる
②指を伸ばす
③指に力を入れ、第2関節を軸にしっかりと曲げる
④指を伸ばす
⑤指先だけに力を入れて、屈曲・伸展を10~15回反復する。

 

 

 

2.両手の指の押し合わせ
①両手の指先を胸の前で合わせる
②両手の指をゆっくりと押しながらつけ根までを合わせ5秒間押した後、緩める動作を反復する
③指先を合わせたまま肘を少し持ち上げると刺激が大きくなる

 

 

 

3.指反らし

①片方の指をもう一方の手で持つ
②肘を伸ばす
③親指を除く4本の指のつけ根の関節を、息を吐きなが
らゆっくりと手の甲側に反らす
④5秒程度反らした後、緩める
⑤5~10回反復後、手を交代する

「あれ、これ」症状と認知症の違い 認知度の危険度もアップするチェックリスト

「あれ、これ」症状は認知症になってしまう?

最近、会話の肝心な部分が「あれ、これ」になっていませんか?

人名、地名など固有名詞が出てこない「あれ、これ」症状は、ときめき世代に特有の悩みです。

この先、認知症になってしまうのでは、と悩む方も多いようです。

でも、大丈夫です。脳は何歳からでも成長し、若返らせることができるのです。

認知症と「あれ、これ」症状の違い

今回は認知症と「あれ、これ」症状の違いを紹介します。そして、文章の後ろにチェックリストを付いています。ご利用してください。

「ほら、あれ、何だったっけ?あれよ、あれ」と言う「あれ、これ」症状です。

「ときめき世代」の皆さんはもう経験していらっしゃるのではないでしょうか。

実際、50代以上の方々から、「人の名前やこゆう名詞が出てこなくなってきたし、物忘れもひどいです。このまま認知症になってしまうのではないか?」と言う質問をよく受けます。

以前ならすらすら言えた人名、地名が出て来ません。

しかもその頻度が上がり、この先の老後に不安を覚えるのでしょう。

でも、安心してください!年齢を重ねていくと、これまで蓄積された情報量が膨大になっているのは当然のことです。

その中から、人の名前や物の名前を即座に引っぱり出すことが難しくなるの当然のことなのです。

医学の見地から分析する

医学の見地から言えば、「あれ、これ症状」と「認知症」は全く別のものです。

時間が経つにつれて“何を食べたか”と言う記憶があいまいになることが「物忘れ」、“食べた”という記憶が脳に残らないのがアルツパイマー病を含む「認知症」です。

「あれ、これ症状」は、ご自分が物忘れをしていると言うことを認識できていますし、いったん記憶できているからこそ「あれ、これ」となるわけです。

チェックリスト

こんな人は「不健康脳」です。認知度の危険度もアップします。

☐1.毎日、単調な生活をしている

☐2.昼夜逆転の生活が多い

☐3.睡眠時間は6時間以下

☐4.仕事を家に持ち込んでいる

☐5.土日もパソコン、スマートフォンが手放せない

☐6.一年以上、旅行に行っていない

☐7.最近、山や海にいっていない

☐8.利き手しか使っていない

☐9.この一週間で新しい出会いがない

☐10.この一年、新しい習い事をしていない

☐11.最近、デパートで衣服を見たり買ったりしていない

☐12.ボランティア活動には参加していない

☐13.毎日神様に手を合わせる習慣がない

☐14.大笑いすることがない

☐15.夜、月や星を見ていない

☹8項目以上「はい」と答えた方は脳が偏った使われた方をしている「不健康脳」かもしれません。

放置すると脳が劣化し、いずれは認知症になる恐れも。何歳からでも遅くありません。

今日から「脳活」を始めましょう!

老年期の病状把握のポイント 老年期の患者さんは「観察」が大事です

老年期の病状把握のポイントと思われることをいくつか述べたいと思います。

まず、夜間せん妄についてですが、実態をしっかり観察できるのは医師よりも看護師や介護者の方たちだろうと思います。

夜間せん妄へ対処していく際には、別の薬剤の副作用ではないかという鑑別も含めて、症状・状態把握が大切です。

その意味で、夜間せん妄の状況を詳細に記録に書き留めていただくことが治療に大きく貢献すると思います。

また、夜間せん妄は夜間に起こることであっても、対処は夜間に行うものばかりではありません。

前述したように、不眠は夜間せん妄の悪化の原因となるので、日中の活動性を上げることが重要です。

日中に眠気や居眠りがないかどうかを観察し、夜中に覚醒しないよう健康的な生活リズムを生活指導くださることが有効だと思います。

入院中の患者さんでは、水分量、尿量、尿性状をチェックすることで脱水を早期に発見することも可能でしょう。

また、便を観察し、そのなかに薬物がそのまま排泄されていたり、溶け残り(吸収不良)があるなどの情報は非常に重要なものとなります。

このように、老年期の精神障害は、「観察」が治療や予防につながることが多くあります。

ケアに関してひとこと。

ほとんど記憶ができなくなった認知患者さんも、普段接する方たちが気分緩やかに、優しく、何事にも焦らず日々対応することによって、感情の表現などに大きな改善が見られるようになったケースをたくさん見てきました。

記銘障害のために短い時間で忘れてしまうであろうどんな小さなことであっても、そのときの患者さんの困惑や不安を解消してあげることは最大のサポートとなるはずです。

臓器の機能が低下している老年期の身体と薬の吸収

老年期になると一般的にすべての臓器の機能が低下します。

高齢者は吸収力が低下していることが多くあり、そのため処方薬を投与しても、薬物の吸収がうまくいかず、投与した量に比べて効果が低いと感じ、短い期間で増量してしまうことがあります。

腸管運動も低下している場合

さらに問題となるのは、腸管運動も低下している場合です。

老齢になると消化器の蠕動運動が低下することが多く、摂取したものは腸管内に滞る時間が長くなります。

そうなると、吸収力が落ちても長い時間腸管内にある薬物は、ゆっくりですがすべて吸収され、ついには才ーバードーズ(過量状態)になることがあるのです。

加えて向精神薬の多くは副作用に便秘がありますから、腸管内に滞る時間はますます長くなり、過鎮静や悪性症候群を引き起こす危険性があります。

代謝能力が低下している場合

また、代謝能力が低下していると、服用した薬剤の代謝が遅くなります。

このため、少ない量で調節したはずであっても薬剤の“使い残し’が体内に蓄積されていきます。

さらに上記のような排泄能力の低下があると、ある日突然、処方を変更していないにもかかわらず副作用などが出現することがあります。

状態をよく観察することが治療に役立つ

原因と考えられる薬剤を止めても、問題は蓄積された薬剤によって起きているのですぐには改善が見られません。

そこで焦って副作用への対処療法などをするとかえって問題が複雑になることがあります。

そのように時は、状態をよく観察しながら経過を見て、必要ならば輸液や解毒を中心に対処します