定型抗精神病薬と副作用

定型抗精神病薬で治療がうまくいっている人はもちろんたくさんいます。それにもかかわらず、新しい抗精神病薬が開発されたのはなぜでしょう。実は定型抗精神病薬は、副作用の発現を抑えるという点では扱いが難しい面があるからです。その理由を説明しましょう。

脳内において、ドーパミン受容体の遮断率が65%になったとき(わかりやすくいうと、100個の受容体のうち65個の信号が抑えられたとき)に抗精神病作用、つまり治療効果が得られます。それ以下では抗精神病作用が得られません。しかしドーパミン受容体の遮断率を上げすぎてしまうと、今度は困った副作用が出てしまいます。具体的にはドーパミン受容体遮断率が72%以上になるとプロラクチン値が上昇し、78%で錐体外路症状が出現するといわれています。

このように、精神症状に効果を示し、かつ副作用を発現させないという条件を満たす領域は65~70%程度と非常に狭いので、その範囲におさまるよう微妙な調整をはかる必要があるのですが、定型抗精神病薬ではその調整が難しいのです。

また副作用を避けるためには図で示した”4つの経路すベて”において、ドーパミンを過剰に遮断するようなことは避けなければなりません。 しかしどのような薬であっても、薬というのは “この経路だけに選択的に作用する”という器用なことはできないため、定型抗精神病薬の作用は、ドーパミンの過剰が起きている中脳辺縁系だけでなく、他の3つの経路にも及びます。その ために、次のような困った副作用を惹起させてしまうことがあるのです。


もう一度図2を見ながら読んでください。

中脳皮質系:理由は解明されていないのですが、統合失調症を発症した人のこの経路では、ドーパミンの減少が起きており、そのために陰性症状と認知障害が生じているといわれています。しかし定型抗精神病薬がこの経路においてもドーパミン受容体を遮断してしまうために、陰性症状と認知障害をさらに悪化させることがあるのです。

黑質線条体系:この経路のドーパミンの量は統合失調症を発症しても変化していないといわれています。しかし定型抗精神病薬がドーパミン受容体を遮断してしまうために、錐体外路症状を出現させることがあるのです。

漏斗下垂体系:この経路のドーパミンの量も変化していないといわれています。しかし定型抗精神病薬がドーパミン受容体を遮断してしまうために、高プロラクチン血症や性機能障害を出現させることがあるのです。

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